160 ヒ  ク  イ  ナ

 北海道、本州、四国、九州の日本全土の水田、湿地等に渡来する夏鳥である。冬期は中国、インドシナ等に渡るが先島諸島の西表島、与那国島等では留鳥である。大きさはクイナより小さくヒメクイナより大きい。ちようどムクドリ位であるが、体が太っており、足が大きいのでムクドリより大きく見える。体の上面は褐色。下面は赤褐色で喉は白い。脚は赤色でよく目立つ。習性も他のクイナと良く似ている。個体数は他のクイナ類より多く、水田の間のあぜ道やイネの株間を歩いているのをよく見かける。水上を泳ぐ時はバンの様に頭部を前後に振り動かしながら泳ぎ、水中にもぐる事もある。河川、沼沢、湖沼のアシ原、水田、湿地、河畔の草むら等に生息し、近くの畑や草原にまで出てくる事もある。巣は草むらの間やイネ株の間等にあるが、中には低木の低い枝の上に作る事もある。ヨシの葉や茎を利用したり、そのまま葉や茎を折り曲げて皿形の巣を作る。巣は草やイネ等でおおわれている事が多い。産卵期は6〜7月頃で5〜9個の卵を産むが通常は8個の巣が多い。卵の色は淡黄褐色で、赤褐色、灰青色等の小斑が全面にある。生まれたばかりの雛は全身黒色で、親につれられて歩いている。餌は主に動物質で特に昆虫類が多く、両生類、禾本科等の種子も食べる。繁殖期には、草むらの中でキョッ、キョッと連続的に鳴き、だんだん早くなり、終りはキョ、キョ、キョで終了する。夕方から夜にかけて又は早朝に鳴く事が多いが、昼間でも鳴く事がある。

 従来から繁殖の確認は日本全土からあったが、今回の調査でも全国的に繁殖が確認された。本種の場合は広い湿地を必要とせず狭い場所(川に面した小さい沼の周辺及び草むら等)でも繁殖しているのでこの様に多くの場所で繁殖が確認されている。又水田を好む習性があるので、他のクイナ類よりも人目につきやすい事も幸いしているものと思われる。薩南諸島、沖縄諸島、先島諸島には亜種であるリュウキュウヒクイナが分布しており、今回の調査でも与論島、宮古島、多良間島で繁殖が確認された。種子島、屋久島、奄美大島、沖縄本島及びその周辺の小島で繁殖の確認は出来なかったが、繁殖の可能性のあるBランクであった。西表島、石垣島、与那国島では今回生息の確認は出来なかったが、今後の調査で繁殖の確認が出来るものと思われる。又北海道東部でも生息が確認されていないが、今後の調査に期待する。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

82

133

42

257

構 成 比(%)

31.9

51.8

16.3

100.0

 

繁殖分布地図索引へ