109 シ ノ リ ガ モ

 全長約430mmの中型のカモで、波の荒い海を好む。♂の冬羽では、一見して全体が黒紫色に見える。しかし、嘴基部、目の後、首、胸に白斑ないし、白線があり、脇腹は栗茶色で、大層美しいカモである。嘴は鉛青色。虹彩は赤茶色。脚は淡青色。♀は全体に黒褐色で、顔に三つの白斑がある。嘴と脚は♂に似るがさえない色である。虹彩は茶色。飛ぶ時は、荒波の中でも、軽々と飛び立ち、翼動早く、直線的に飛ぶ。

 東北シベリアから北米大陸太平洋岸北部、グリーンランド等に繁殖する。繁殖地と越冬地は比較的近く、波の荒い岩礁地帯を好む。日本に近い所では、カラフト、千島列島での繁殖が知られている。繁殖地はサケの遡上する川の渓流部で、礫があり、樹木の良く茂った所であるという。採餌は潜水して行うことが多い。潜る深さは3〜4mが普通という。餌は冬期、貝などの軟体動物、甲殻類、環形動物、魚、魚卵などがほとんどであるという。また夏期には、双翅目の昆虫およびその幼虫がこれに加わる。植物質も、わずかではあるが藻などを食べる。

 繁殖期は5〜7月で、良く発達した樹林または低木林の地上部で、しばしば、岩の間などにも巣を作る。巣は、草と小枝で♀が作り綿毛を敷く。コートシップは流れの早い川瀬で行なわれる。卵は、鈍い楕円形。淡黄色無斑。58×41mm、53g(飼鳥の例)。一腹卵数は5〜7個。卵は1〜2日おきに産まれる。孵化日数は27〜29日。抱卵は♀が行い、♂はこの時期、換羽のため川を下るという。早が巣を離れるのは、採餌の時だけで、この時、卵を綿毛で覆う。雛は早成性で、巣立後すぐに流れに連れて行かれ、自分で餌をとる事を習う。独立には60〜70日かかる。最初の繁殖は2年目から。

 本種の我国に於ける繁殖は、近年まで知られていなかった。1976年青森県西部で、6羽の雛を連れた♀が発見され、繁殖が確認された(日本野鳥の会、1978)。今回の調査では、さらに宮城県栗駒山麓と青森県下北半島の二ケ所で新たに繁殖が確認された。本種の繁殖分布を世界的に見ると、かなり高緯度地方に集中している。我国に於いて、北海道を飛びこえて、本州青森県、宮城県で繁殖が報告されたのは興味深いものである。しかし、北海道では夏期観察の記録があり、繁殖の可能性があるので、今後の精査によって新たな繁殖地を加えることが出来ると思われる。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

4

1

1

6

構 成 比(%)

66.7

16.7

16.7

100.0

 

繁殖分布地図索引へ