046 ヨ シ ゴ イ

 全長365mm。日本産サギ類中、最も小さい。全身黄褐色で上面は濃く下面は淡い。頭部と翼の風切羽は黒色で、飛翔中に翼上面に現われる黒と褐色の模様は遠方からでも目立つ。アシ原の上すれすれのところを、翼をかなり早く羽ばたいて飛ぶ。夏鳥として、北海道や本州の、主として低湿地のアシ原の草原、沼沢、水田、湿地の草原、湖畔、河畔の草原に生息し、冬期本州には少数残留するものもいる。単独、または♂♀で生活し、群れることは稀である。常にヨシの草原、稲田、湿地の草原等の丈高い草の中に潜み、見通しのよいところに姿を現わすことはほとんどない。草間の地上や水中を歩渉して餌を探す。魚類を主食とするがカエルの類等も好む。夕暮時や暁などによく活動する。害敵が近づいたりすると嘴を上に向け、首を真すぐ上に伸ばして静止し、相手が動くに連れて体の下面をその方に動かしてゆく習性がある。腹面や喉には縦斑があるので付近のヨシと識別が困難である。繁殖期には、ウーウーウーと間隔をおいてうめくように連続して鳴く。水辺にあるヨシやマコモの草原に営巣することが多いが、時には沼沢、水田地帯の村落の竹薮や灌木などに営巣することもある。巣はヨシやマコモの水面から0.3〜1mくらいの茎上や茎間の地上にあり、ヨシ等の十数本の茎の上に生えたままの葉や茎をたばねて皿型の巣を作る。産卵期は5月下旬から8月上旬頃までで1巣の卵数は5〜6個である。

 分布は北海道、本州、四国、九州から、伊豆諸島、小笠原諸島、硫黄列島、琉球諸島、大東群島にわたるが、今回の調査では本州、四国、九州で繁殖が確認された。とりわけ、関東地方の霞ケ浦周辺は確認の記録が集中しているところから、霞ケ浦周辺のアシ原や休耕田が全国で最も大規模な生息地となっているものと思われる。山岳地帯では繁殖の記録は少いが、沿岸地方だけでなく、内陸部の栃木、群馬、長野県でも繁殖が確認されている。山梨県富士山麓の山中湖(982m)でも繁殖の記録があり(清棲 1932)、標高1,000m位までは生息すると言う。北海道では従来繁殖が知られているが、今回の調査では生息が確認されたのみであった。

 ヨシゴイは近年の急速な湿地開発によって生息環境を奪われ、急激に減少している鳥の一種と言われ、全体の数も限られたものであろう。深くアシの中にひそんで生活するために生息の確認が難しく、繁殖の確認も困難な場合が少くないために人知れず激減してしまう恐れがあるので、一刻も早い今後の調査網の整備と保護策が望まれる。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

44

32

27

103

構 成 比(%)

42.7

31.1

26.2

100.0

 

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