042 チシマウガラス

 全身光沢のある黒色で、生殖羽では顔は鮮やかな橙赤色で冠羽を有する。嘴は白っぽい。小型で首が細く全体が細っそりと見え、外形は前述のヒメウに酷似する。名前のとおり千島に多く、荒波の打ち寄せる海洋や島嶼、岩礁、海岸の岸壁などに生息する。泳いだり潜ったりして餌をあさり、食性は動物質で魚類を主食とするが、エビ、カニの類も捕食する。水上では深く身体を沈め、尾を水に浸している。よく泳ぎ、巧みに潜水する。水面から飛び立つ時にはかなり長い距離を滑走し、低空を直線的に飛翔する。海岸の岩壁等に集団で営巣し、枯れ草や、海藻を主材として皿型の巣を作る。産卵期は5月中旬から7月中旬までで、1巣の卵数は4〜7個である。雛は全身灰色がかった黒色の綿毛に包まれている。巣立ちした若鳥は体全体に光沢がなく、頭部と背は黒色、翼、腹、尾は濃褐色である。

 チシマウガラスはカムチャッカ半島沿岸部、コマンドル諸島、アリューシャン列島、千島列島で繁殖し、日本では北海道のユルリ島、モユルリ島が唯一の繁殖地とされていたが、今回の調査では落石岬で繁殖が確認された。ユルリ、モユルリ両島では、断崖の中部にある岩崖や岩のくぼみに営巣し、巣の数は140(環境庁 1973)。コロニーの場所は年によってかなり変化することがあり、営巣に適していると思われる場所が必ずしも毎年使われることはない。この両島はチシマウガラスの繁殖地の南限である。サハリンでは営巣しておらず、南千島の色丹島でも20〜30番が営巣しているにすぎず、ユルリ、モユルリ島のコロニーは南限でありながらかなり大きなものである。かつては花咲のタテ岩で営巣していたが、現在では営巣していないので、落石岬での繁殖確認は貴重な報告と言える。今後の精査に期待したい。根室半島から落石岬付近では、繁殖期以外でもヒメウやウミウと混生していることが多いが、本州以南に渡ることは稀である。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

1

0

0

1

構 成 比(%)

100.0

0.0

0.0

100.0

 

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