005  カ イ ツ ブ リ

 全長260mm。背面は暗褐色で下面は淡い黄褐色。水上のみで生活し、潜水が巧みである。体は丸く、尾はほとんど見えないほど短い。夏羽では全体の色彩が濃くなり、更に頬から喉にかけて赤褐色を呈し嘴も黒くなるが、冬羽では色彩はうすくなり、喉は白っぽく、噴も黄色になる。翼は短く、飛行は下手で、水面から高く上ったり長距離を飛行することは少い。平地の湖沼、湿地、掘、河川等に生息し、ヨシの多く生える水辺に多く見られる。繁殖期には♂♀で生活し、ある生息領域を占有するが、冬期には20〜30羽の群れを作ることもある。普通はヨシの密生する水面にいるが、採餌の時には広々とした水面にも現われる。水の澱む水面に浮き巣を作る。巣はマコモ、ヨシ、ハス等の葉、茎を利用して作り、皿型で水面から6cm程の高さがある。水面下の部分が5/6も近くを占め、全体では、高い円錐形を逆にしたような形をしている。♂♀協力して造巣する。産卵期は5月〜7月で、1巣の卵巣は3〜6個である。♂♀共に抱卵し、抱卵中に親鳥が巣から離れる時には水草で卵を覆ってゆく。雛は20〜25日で孵化し、すぐに泳ぐことができる。餌は主に動物質で、ドジョウ、フナ、貝類、水生昆虫等が多い。

 分布は全国にわたり、北海道、本州、四国、九州の他、伊豆諸島、奄美大島、対馬、小笠原諸島、琉球諸島、大東群島にも生息する。北海道から九州まで各地で普通に繁殖するが、北海道と本州北部では夏鳥、本州中部以南では留鳥である。

 今回の調査では、全国にわたって繁殖が確認された。関東、東海から近畿、瀬戸内地方、また九州北部等に繁殖確認が集中しているが、これは我国の大きな平野部に相当するところから、平野部には普通に繁殖すると見ることができる。関東地方には、茨城県霞ケ浦や利根川河畔にヨシの密生する広範な地域があり、滋賀県の琵琶湖も、昔から“鳰の湖”としてカイツブリが多いことで知られている。また、近畿地方から四国の平野部にかけては農業用の溜め池が多く、カイツブリの繁殖に適した環境が多いものと思われる。一般に標高が高くなるに従って生息数は少くなり、高山の湖沼では稀である。今回の調査でも繁殖例は平野部がずっと多いが、福島、栃木、群馬、長野、岐阜各県でも繁殖が確認されている。福島県猪苗代湖、群馬県尾瀬沼、山梨県富士山麓の山中湖や河口湖でも観察例がある(清棲 1978)ことから、今後の調査によって標高の高い地域での繁殖記録が増えてくる可能性もあるだろう。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

339

165

70

574

構 成 比(%)

59.1

28.7

12.2

100.0

 

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