ま え が き

 我が国の自然環境を破壊から守り適正に保全して行くためには,科学的な方法により全国的に調査された自然環境についてのデータを整備することが不可欠であります。昭和48年度に行われた第1回自然環境保全基礎調査,通称「緑の国勢調査」は,その意味で極めて画期的なものであり,集積されたデータは,貴重な資料として自然保護行政の推進に効果的に活用されております。

 第2回調査は,昭和53,54年度の2か年にわたり実施され,得られた結果は,昭和54,55年度にデータの点検・整理や全国的な集計作業が行われています。この報告書は,第2回調査のうち,我が国に生息する鳥類の繁殖状況を全国的に把握するために,これまで日本国内で繁殖の知られている鳥類257種を対象として繁殖期における分布について調査した結果をとりまとめたものです。

 従来,鳥類の繁殖分布調査は,欧米諸国では早くから実施されていましたが,我が国では都道府県単位での分布の記載にとどまり,それ以上の詳しい全国的な分布状況は,ほとんどわかりませんでした。この調査の結果により,257種のうち205種におよぶ鳥類について,全国繁殖分布図が作成できたことは,分布情報の空白を埋めるうえで大きな前進となるであろうと確信いたします。

 この調査は,環境庁自然保護局の責任で行ったものですが,調査を実施するに当たって,調査の内容・方法の検討や調査要綱の作成に御参画いただいた検討委員各位,現地観察調査や資料収集に当たられた日本野鳥の会各支部の調査担当者各位等多くの方々の御協力がなければ不可能でした。また,本報告書は,調査・集計の委託業務取扱いや,本書の発行に際し貴重な写真と口絵を提供いただいた日本野鳥の会事務局の担当者各位の御努力により完成をみたものであります。これらの方々に対し心から謝意を表するとともに,調査結果が,各種の行政や研究の基礎資料として,あるいは,野鳥観察の手引きとして活用され,自然環境保全のために役立つことを願う次第です。

  昭和56年1月20日

環境庁自然保護局長       

正 田 泰 央

 

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