ウサギ目 ウサギ科 絶滅危惧IB類(EN)

和名 アマミノクロウサギ  
学名 Pentalagus furnessi
原記載
英名 Amami rabbit
固有性 日本固有種



摘要

奄美諸島の奄美大島と徳之島の2島にのみ分布する固有種である。特異で原始的な形質を有すること、分布域がきわめて限定されていることなどから学術的にも重要視されている。分布域は奄美大島で約370km2、徳之島で約33km2、個体数は奄美大島で2,600〜6,200頭、徳之島で120〜300頭と推定されている。自然林の伐採、林道建設、河川改修、移入捕食者(マングース、イヌ、ネコ)がその存続を脅かしている。


形態

背面が焦茶色、下面は淡い茶色を帯びた暗灰色の体色をしている。体重は1,300〜2,700g、頭胴長418〜510mm、尾長11〜35mm、後足長85〜92mm、耳長4〜45mm。目と耳介が小さく四肢が短い。爪は強大で穴掘りに適している。頭胴長はノウサギ(Lepus brachyurus)と同等であるが、耳介と四肢は約半分である。


分布の概要

鹿児島県の奄美大島(712km2)と徳之島(248km2)にのみ分布している。


生物学的特性

高齢級林の中あるいはこれに隣接して餌量の多い疎開地(林冠ギャップ、伐採跡地、若齢二次林、沢、林縁等)がある環境が好適と考えられている。

飼育下の観察では、繁殖は4〜5月と10〜12月の年2回、1産1仔、産下された仔の体重は100gほどで、約2ヶ月後に巣穴から出てくる。年間を通して仔ウサギの糞が見られるところから、年間を通して繁殖している可能性がある。飼育下での寿命は15年ほどである。休息は樹洞や岩穴のほか大木の根元に長さ3〜4mの穴を掘る。産仔用の巣穴は、長さが1mほどで、母親が夜間授乳に来るとき以外は入口は閉鎖される。鳴き声でコミュニケーションを図る。


分布域とその動向

分布域は奄美大島で約370km2、徳之島で約33km2と推定されている。奄美大島では1970年代と比べると分布域の縮小が見られ、徳之島では孤立した2地域に生息するに過ぎない。

分布情報:2次メッシュ数:3、3次メッシュ数:7(第4回自然環境保全基礎調査)


個体数とその動向

個体数は減少傾向にあり、1998年に奄美大島で2,600〜6,200頭、徳之島で120〜300頭と推定されている。生息数が比較的多い地域は、奄美では川内川左岸部、住用川上流部から湯湾岳周辺部など、徳之島では、天城岳南部、井之川岳西部である。


生息地の現況とその動向

奄美大島では、北部と島の外縁部にリュウキュウマツ植林が、中部以南に山地自然林(シイ・カシ林)が広がっている。徳之島では広い範囲にリュウキュウマツ植林が広がり、北部の天城岳周辺と中部東寄りの井ノ川岳周辺のみに山地自然林が見られる。山地自然林の面積率は、奄美大島で30%、徳之島で15%、リュウキュウマツ植林は奄美大島が43%、徳之島が24%となっている。1953年に奄美諸島が日本に復帰し、奄美振興事業による林道建設が始まったのにともない、それまで択伐であった伐採方式が皆伐になり、伐採跡地に天然更新した若齢林の面積が急速に増加した。


存続を脅かしている原因とその時代的変化

森林伐採(11)、道路建設(24)、河川改修(13)、土地利用転換などによる高齢級林の減少、細分化により、これらを好適な生息地とする本種の個体数減少、地域的な絶滅をもたらすおそれがある。また、奄美大島では1979年前後に移入されたといわれるジャワマングース(Herpestes javanicus)が分布を拡大しており、捕食者として脅威となっている。このほか、野犬も捕食者として知られる。


特記事項

森林伐採を制限し、孤立化した林分を回廊により連続化し、保護地域を設定することや、保護地域の周辺は生息適地となるような森林施業を行い、バッファーゾーンとすることが望まれる。

移入捕食者の駆除と並行して、イヌ、ネコの放飼禁止、生活史の解明、普及、啓発活動が重要である。


保護対策

1921年に、動物としては初めて国の天然記念物に指定され、その後1963年には特別天然記念物に指定されている。また、アマミノクロウサギを捕食している移入種ジャワマングースの駆除を図るために、1996〜1999年度に環境庁(当時)・鹿児島県による「島嶼地域における移入種駆除・制御モデル事業(マングース)」が行われ、2000年度からは環境省による本格的な駆除事業が進められている。


参考文献
1. 自然環境研究センター,1995.平成6年度生態系多様性地域調査(奄美諸島地区)報告書.自然環境研究センター,東京.108pp.
2. Stone, W., 1900. Descriptions of a new rabbit from the Liu Kiu islands and a new flying squirrel from Borneo. Proc. Acad. Nat. Sci. Philadelphia, pp. 460-463.
3. 杉村乾・佐藤重穂・山田文雄・平川浩文・阿部慎太郎・半田ゆかり,1997.糞塊調査に基づくアマミノクロウサギの生息状況.日本哺乳類学会1997年大会講演要旨集,p.62.
4. 杉村乾,1998.アマミノクロウサギPentalagus furnessiの生息数の推定と減少傾向について.第12回環境情報科学論文集,pp.251-256.
5. 山田文雄・阿部慎太郎・半田ゆかり,1998.奄美大島の希少種生息地における移入マングースの影響.日本哺乳類学会1998年度大会講演要旨集,p.70.

The Amami rabbit (Pentalagus furnessi) is endemic to Amami-oshima and Tokuno-shima of the Ryukyu Islands. Population size was estimated at 2,600-6,200 in Amami-oshima and 120-300 in Tokuno-shima. The major threatening factors are a decrease in the area of natural forests, road construction, and non-native carnivores (mongoose Herpestes javanicus, domestic cat and dog).

阿部學(元新潟大学農学部)


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