キツツキ目 キツツキ科 絶滅危惧IB類(EN)

和名 オーストンオオアカゲラ  
学名 Dendrocopos leucotos owstoni
原記載
英名 【White-backed woodpecker】
固有性 日本固有亜種



摘要

種オオアカゲラ(Dendrocopos leucotos)の中で最大の奄美大島のみに生息する固有亜種で、羽毛が著しく暗色であることによって他の亜種とはっきりと区別される。分布域が限られ、営巣やねぐら穴のために大径木を必要とする。人里での営巣記録も多いが、そこではほとんどの巣立ち雛がハシブトガラス等に捕食されていると推定され、大径木のある照葉樹天然林内の少数の巣だけで有効な繁殖が行われていると思われる。


形態

全長約30cm、翼長152.5±2.9mm(n=22)。背面は黒く、翼に小さい白斑を有する。頬から胸にかけて濃褐色、腹部は赤く太い黒色縦斑を有する。嘴は黒灰色。オスの頭部は赤い。

翼と尾や嘴など各部位との相対的な大きさを基準にすると、長い尾や細長い嘴をしていることから、本亜種は他の個体群よりも柔らかい木をつついているらしいと推測され、暖かい奄美大島の枯木や枯枝が腐りやすい森林に生息することと合致する。


分布の概要

奄美大島の希少鳥類の主要4種の中で分布域はもっとも狭く、笠利半島や奄美大島と最短地点で約1kmしか離れていない加計呂麻島には分布していない。


生物学的特性

朽ち木の中にいるカミキリムシ類の幼虫を中心にした昆虫類が主食。朽ち木のほか、枯木や生木の枯死部分をつついて穴を開けたり砕いたりして食べていることが多く、地上から2〜10mの位置で主に活動している。

4月中旬までに産卵し5月中旬以降に巣立つ。営巣木やねぐら穴の掘られる木は、巣穴の入口付近でも直径が40cm近い太い広葉樹。


分布域とその動向

分布域は極限され、歴史的変化は少ないと考えられるが、近年、笠利半島での観察例もあり、森林の回復にともなって営巣する可能性もある。

繁殖期分布情報:サブメッシュ数:5(第2回自然環境保全基礎調査)

越冬期分布情報:2次メッシュ数:0、3次メッシュ数:0(第3回自然環境保全基礎調査)


個体数とその動向

生息数について信頼できる資料は得られていない。

1960年代〜1980年代に営巣木やねぐら木として重要な大径木のある高齢の照葉樹林が減少、分断化されて、個体数は減少した状態が続いていると推測される。1990年代に入ってからの伐採面積の減少で、減少速度は鈍っているかもしれないが、大径木の量は回復しておらず、減少傾向は続いている懸念がある。繁殖成績も、林縁部での営巣の割合が多く、若鳥が捕食者に遭う率が高いと懸念される。


生息地の現況とその動向

1960年代〜1980年代に営巣木やねぐら木として重要な大径木のある高齢の照葉樹林の減少、分断化が急速に進んだ。1990年代になって減少率は低下し、森林蓄積は回復しているが、営巣に適した大径木の回復にはまだ20〜30年を要する。


存続を脅かしている原因とその時代的変化

1960年代〜1980年代に大径木のある高齢の照葉樹林が急速に減少、分断化されて生息環境が減少、分断化された。また、ハシブトガラス等の捕食による若鳥の死亡率の増加が存続を脅かしている可能性が高い。分布域が極限され、大きな行動圏を必要とすることから、個体群が小さい。台風などの突発事象によって、さらに個体群が脆弱化するおそれもある。


特記事項

東アジアにおいて、種オオアカゲラの個体群間に外部形態の大きな変異が見られる。本亜種と地理的に近い台湾産の亜種はもっとも小さく羽色も淡色で、本亜種と両極端の対比を成すなど、個体群の系統や進化が興味深い。


保護対策

種の保存法に基づく国内希少野生動植物種。国の天然記念物。


参考文献
1. 石田健,1989.オーストンオオアカゲラとノグチゲラ個体群の保護と調査・研究に関する提言.Strix,8: 249-260.
2. 石田健・金城道男・村井英紀,1989.オーストンオオアカゲラ Dendrocopos leucotos owstoni の分布、生態および保護.1988年度環境庁特殊鳥類調査報告書,pp. 89-124.環境庁.
3. 石田健・樋口広芳,1989.オーストンオオアカゲラ Dendrocopos leucotos owstoni の分類および形態上の特徴.1988年度環境庁特殊鳥類調査報告書,pp125-140.環境庁.
4. 石田健・杉村乾・山田文雄,1998.奄美大島の自然とその保全.生物科学,50(1): 55-64.
5. 石田健・植田睦之,1995.奄美大島におけるオーストンオオアカゲラの生息状況.奄美大島希少鳥類生息状況調査報告書, 1994年度環境庁希少野生動植物種生息状況調査,pp. 25-40.環境庁.
6. 石田健・植田睦之・金井裕,1994.オーストンオオアカゲラのドラミングに基づく生息密度の推定.1993年度環境庁希少野生動植物種等生息状況調査報告書,pp. 69-74.環境庁.
7. Short, L. L., 1982. Woodpeckers of the World, Delaware Museum of Natural History 4, Greenville, Delaware, 676pp.

Dendrocopos leucotos owstoni is the largest subspecies of the widespread Eurasian white-backed woodpecker D. leucotos. This population occurs only on Amami-Oshima Island. It inhabits broad-leaved evergreen forests, where it roosts, and nests in cavities of large trees. It feeds on woodborer beetles in decaying woods. The small number of breeding pairs that nest within mature natural forests seem to fledge their young successfully, however, those breeding around the forest edge suffer a low success rate due to predation of their fledglings by crows. The major threat to this population is the loss and fragmentation of its mature forest habitat.

石田健(東京大学大学院農学生命科学研究科)・金井裕(日本野鳥の会)


All Rights Reserved, Copyright Environment Agency of Japan.