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ダツ目 メダカ科 絶滅危惧II類(VU)

和名 メダカ  
学名 Oryzias latipes (Temminck et Schlegel, 1846)
原記載 Temminck, C. J. and H. Schlegel. Pisces, Siebold's Fauna Japonica. Parts 10-14. p. 224
英名 Medaka ricefish
固有性



摘要

北海道から琉球列島まで広い範囲に分布する。もともと水田とそれにつながる用水路、溜池などに多く生息し、流れのある場所であっても水草の多い静水域を好む。近年ではメダカが生活できる環境が、都市化と水田の乾田化や小川の消失などにより著しく減少したため、日本全体での分布域が縮小し続けている。現状では分布地が確認できない県も生じている。本種の存続をはかるためには、遺伝学的地理変異を考慮しながら地域個体群の保護と生息環境の保全と復元が早急に必要とされる。


形態

成熟個体の全長は、雌雄共に最大で約40mm。頭部はわずかに縦扁し、大きな両眼の間隔は平坦で広い。雑食性であるが、落下した昆虫なども捕食するので、口は小さいが上向き。側線はなく、縦列鱗数は29〜33枚。背鰭の位置は体の後方にあり、臀鰭の後端とほぼ同じ位置にある。背鰭と臀鰭の形は雌雄差が明瞭で、オスの背鰭外縁には欠刻があるが、メスにはなく、オスの臀鰭は大きく平行四辺形であるのに対し、メスでは幅が狭く、後端ほどさらに狭くなるなどの違いがある。胸鰭と腹鰭を除く各鰭は角張っている。暗褐色の1背中線があり、肛門付近から後方の両体側中央にも暗褐色線がある。野生のメダカの体色は一般には淡褐色であるが、遺伝的表現型は6色型が知られ、なかでも黄褐色のヒメダカは愛玩用としても有名。


分布の概要

属名のOryziasがイネの属名Oryzaに由来していることが示すように、水田とそこに連結する用水路などが本種の本来の生息地であるため、北海道を除く本州以南、琉球列島まで広く分布していた。しかし近年の調査では、北海道、東京都、福井県、山梨県、愛媛県、宮崎県からは分布記録が得られず、分布地点が10地点に満たない県が27もあったという現状である。しかし一方では各地で遺伝的な地域性を無視した移殖放流も行われている。国外では朝鮮半島と中国(中・南部、台湾)に分布する。


生物学的特性

生息環境は河川下流の緩流部、溜池、用水路、水田や水田の導・排水溝。また、多くはないが汽水域などの塩分の耐性にも強い。昼行性で、活動は薄明時から始まり、日中は浅瀬で水面近くを群泳し、夜間は岸際の水草の間で休止する。食性は動物・植物プランクトンや小さな落下昆虫など雑食。産卵期は4月中旬〜8月末頃までで、当歳魚がその年の産卵に加わることもある。体内卵数は多い(500〜700粒)が一度の産卵ではせいぜい50粒ほど、メスは生殖孔付近に卵塊をつけたまま遊泳する。卵にある多数の付着糸で水草に付着させる。10〜20日で孵化し、全長25mm位で成熟し、産卵個体として加わる。1年魚。1集団間においても体色は、個体変異が大きい。


分布域とその動向

かつては青森県を北限とする本州から、沖縄島を南限とする琉球列島まで広く分布しており、本州、四国、九州、沖縄においては自然分布としての生息箇所はきわめて多かったと言える。環境省の種の多様性調査(1999年度)によれば、北海道、東京都、福井県、山梨県、愛媛県、宮崎県から分布記録がなく、分布地点が10地点に満たない県が27もあった。その後平成13年度に実施された農林水産省と環境省との連携による「田んぼの生きもの調査」の結果では、北海道(移殖による)、福井県、愛媛県、宮崎県からはメダカの分布は記録されたものの東京都と山梨県からは分布の再確認が得られていない。一方で、今後の人為的な移殖放流による分布拡大が危惧される。

分布情報:2次メッシュ数:691、3次メッシュ数:1,330(生物多様性調査動物分布調査)


個体数とその動向

本来の生息環境である水田と用水路、河川支流地域の小川などが残されている地域での個体数は年間を通してほぼ安定している。しかし全国的な大規模基盤整備による水田の大型区画化や対照的な乾田化、生活雑排水の流入汚染の影響により、親魚の個体数の安定した確保が困難になっている。また用水路などもコンクリート壁化により産卵床としての水草繁殖場が消失しているので、個体群の再生産が望めない場所が増加していることが個体数を維持できない原因にもなっている。


生息地の現況とその動向

残されている現在の生息地がすべて同じ傾向であるとは断言できないが、都市化の進んだ近郊生息地では、ほとんど局在的な形でしか生息地が残っておらず、生存している個体数も数が少ないために遺伝的劣化を起こしやすい状況と言える。現在の生息地はかつてのメダカができた分散と往来の経路が絶たれている。一方ではこのような現状を踏まえて各地において移殖放流が盛んになってきている。


存続を脅かしている原因とその時代的変化

自然分布地の減少に拍車をかけた要因としては、大型区画水田化と乾田化、また用水路整備にともなう溜池の不用化、都市近郊の各種造成工事(23)による生息地の消失、生活雑排水の生息地への流入汚染(31)、用水路のU字溝化とコンクリート壁化、産卵床としての水草繁茂地の減少と消失、用水路と水田との水流落差の増大による生息地の孤立化、外来魚のブラックバスやブルーギル(Lepomis macrochirus)などによる食害(52)が挙げられる。


特記事項

メダカの保護のために現在多くの地域で「増殖放流」が行われているが、専門的な調査研究からメダカには「遺伝学的地理変異」という特徴が知られ、無差別な放流による遺伝的特徴の攪乱を起こしている傾向が強い。生息地の保護拡大を願うばかりに、もとの生息地水系以外に放流することは理念先行であり、遺伝子レベルでの生物資源の保全にはむしろ逆行している。メダカが生息可能な環境を一つでも多く残すことが、その水系のメダカの保存につながるという環境教育も必要である。

水産庁のデータブックでは琉球列島産のものが絶滅危惧種とされている。


保護対策

とくになし。


参考文献
1. Matsuda, M., H. Yonekawa, S. Hamaguchi and M. Sakaizumi, 1997. Geographic variation and diversity in the mitochondrial DNA of the Medaka, Oryzias latipes, as determined by restriction endonuclease analysis. Zool. Sci., 14: 517-526.
2. 岡村収,2002.メダカ.高知県レッドデータブック[動物編],pp. 188-189.高知県文化環境部環境保全課.
3. 佐原雄二,1989.メダカ.川那部浩哉・水野信彦(編),日本の淡水魚,pp. 426-429.山と渓谷社,東京.
4. 酒泉満,1997.メダカ地方集団間に見られる遺伝子移入.平成9年度日本魚類学会サテライトシンポジウム「交雑による魚類の進化」プログラム,p. 4.
5. 瀬能宏,2000.ダツ目,メダカ亜目,メダカ科,メダカ.中坊徹次(編),日本産魚類検索:第二版,p. 547.東海大学出版会,東京.
6. Temminck, C. J. and H. Schlegel, 1846. Pisces, Siebold's Fauna Japonica, pp. 173-269.

Oryzias latipes : Beloniformes, Adrianichthyidae (VU) [Plate 12-A]

The Japanese “medaka” used to occur commonly in rice paddies, irrigation canals and ponds throughout Japan, from Hokkaido to Okinawa. However, habitat loss and environmental changes, including changes to irrigation systems, have resulted in drastic decreases in population numbers and/or extinction in many places.

林 公義(横須賀市自然・人文博物館)


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