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事業活動と生物多様性に関するシンポジウムの開催結果について

 環境省は、3月7日(月)に東京都内において、生物多様性の取組に関心のある事業者団体、事業者の方々のほかNPO/NGO及び自治体の方々を主な対象とし、「事業活動と生物多様性に関するシンポジウム」を開催しました。
 一般社団法人コンサベーション・インターナショナル・ジャパン代表理事の日比保史氏による講演のほか、環境省による生物多様性の民間参画の推進に向けた施策紹介、事業者団体による取組事例紹介を行いました。交流会では、登壇の事業者を含む9団体のブースが出展され、参加者との情報交流が活発に行われました。
 その後のパネルディスカッションでは、経団連自然保護協議会企画部会長の石原博氏のコーディネートにより、「事業者の生物多様性に関する取組促進のため事業者団体に期待されること」についての意見交換を行いました。

開催概要

「事業活動と生物多様性に関するシンポジウム」開催概要は以下の通りです。

日時

平成28年3月7日(月)13:30~17:30

会場

損保会館 2F大会議室 (東京都千代田区神田淡路町2-9)

主催等

主催:環境省

共催:経団連自然保護協議会、日本商工会議所、国連生物多様性の10年日本委員会(UNDB-J)

出席者数

約160名


開催結果 1.開催挨拶

 主催側から環境省が、共催者を代表して経団連自然保護協議会から開会の挨拶がありました。

堀上 勝
(環境省自然環境局自然環境計画課
 生物多様性施策推進室長)
石原 博 氏
(経団連自然保護協議会
 企画部会長)

2.自然資本アプローチによる生物多様性の経済活動への主流化

 日比 保史 氏
(一般社団法人コンサベーション・インターナショナル・ジャパン 代表理事)


 日比氏からは、まず主に企業による生物多様性の保全と持続可能な利用の取組の、国内的な経緯・背景について説明がありました。わが国における環境保全の取組は主に公害対策が始まりであり、生物多様性が一つのテーマとして扱われるようになったのは近年であることや、生物多様性の保全の取組は当初社会貢献的な活動が多く、ここ最近になって、本業の中で取り組むことが本当のCSRである、という風潮となったことなどが説明されました。
 次に、自然資本の考え方に関するより具体的な説明がありました。自然資本は非生物系と生物系に分けられ、このうち生物系が生態系サービスを生み出しており、これらの上に人間の幸福(human well-being)が成り立っていること、さらに生物多様性が高い地域に自然資源が豊富にあることが説明されました。また、同時に重要な点として、生態系サービスは複合的な価値を持っていることと、現在の経済システムの中では、多くの場合、生態系サービスに対して適切な経済的価値を認識してこなかったことが強調されました。
 後半では、地球環境問題はこれから新たなフェーズに入りつつあるとされました。これから事業者は、生物多様性の保全の取組をはじめ、持続可能な社会に向けた取組を事業活動全体で実施することが求められてくるとのことでした。さらに、パリ協定に象徴されるように「環境負荷実質ゼロ」に向かう大きな流れが始まりつつあり、ビジネスはこれに対してバックキャスティング的アプローチが求められることなどが紹介されました。こういったものを代表する動きの一つとして、自然資本プロトコル(ビジネスが自然資本に対して持つ直接的・間接的な影響と依存度を計測・評価する標準化された枠組み)が紹介されました。


3.施策紹介  環境省 「事業者団体の取組を通じた生物多様性の民間参画の推進に向けて」

 鈴木 宏一郎
(環境省自然環境局自然環境計画課 生物多様性施策推進室 室長補佐)


 生物多様性に関する事業者の取組状況に関しては、着実に進展しており、例えば生物多様性民間参画パートナーシップの会員のなかでは、生物多様性を経営理念に入れている会員の割合が増加しているなどの紹介をしました。一方、愛知目標の達成状況に関して地球規模生物多様性概況第4版(GBO4)では、ほとんどの目標において進展はあったものの不十分との評価にとどまっている旨の紹介をしました。このような状況を踏まえた環境省の施策として、事業者の取組に関する事例集やマニュアルの整備、優良事例の発掘・発信や表彰、業界全体の取組を底上げするための事業者団体の取組を支援するモデル事業の実施等について紹介しました。
 後半では、この事業者団体の取組を支援するモデル事業について詳しく紹介しました。事業者団体を支援するモデル事業には、日本製紙連合会、(一社)日本旅行業協会・日本エコツーリズム協会、(一社)プレハブ建築協会が参画しています。取組の内容は各団体で異なりますが、それぞれの団体において具体的な成果が得られたこと、また、モデル事業全体を通して得られたこととして、まず取組の初期段階では検討組織を設置することが重要であることや、業界で取り組むメリットなどを整理する必要があることを説明しました。


4.事例紹介 (1) 日本製薬工業協会 「『生物多様性に関する基本理念と行動指針』と取組事例」
 岡田 昌昭 氏
(日本製薬工業協会 環境安全委員会環境部会 副部会長、アステラス製薬株式会社 総務部 次長)

 岡田氏からは、はじめに日本製薬工業協会としての取組を紹介頂きました。日本製薬工業協会では、2011年に改訂された「製薬協企業行動憲章」の中で生物多様性について言及するとともに、2012年に製薬協の「生物多様性に関する基本理念と行動指針」を作成しました。この行動指針を作る過程において、製薬工業協会は、「持続可能な社会作りへの参画」が重要な課題であり、生物多様性はそのアプローチの一つに過ぎないこと、また生物多様性を単独で捉えるより他のテーマと密接に関係するものと整理する方が適切であると考えを整理したとのことです。
 また、協会としての取組の一つとして、会員企業への働きかけ(アンケート)を紹介頂きました。このアンケートは環境安全部会の計22社を対象としたものであり、当初は「生物多様性に関する基本理念と行動指針」の認知が低かった一方で、生物多様性と企業の関係はあると整理している企業が半数を超えていたことなどを紹介頂きました。
 後半では、アステラス製薬株式会社としての取組をご紹介頂きました。アステラス製薬株式会社としては、研究にトカゲの生成物質を活用するなど、生態系サービスを多く得ている一方で、人体から排出される物質による環境負荷など、様々な環境負荷をかけていると考えている旨が説明されました。アステラス製薬株式会社では、こういった背景を踏まえ、2011年に環境安全ガイドラインを改定し、生物多様性に関する項目を含めたとのことです。この中で、直接的アプローチとしては「生物多様性指数」による事業活動と生物多様性への影響の評価、間接的アプローチとして、「アステラスの森」という森林再生活動を進めているとの説明がありました。




(2) 一般社団法人不動産協会 「不動産業界における生物多様性保全の取組」
 栗原 昭広 氏
(一般社団法人不動産協会 事務局長代理)

 2013年3月に不動産業環境実行計画を策定し、自然環境・生物多様性の保全に関する項目を追加したのが転換点であったとのことです。この内容としては、自主的・主体的取組の他、関係者と連携した取組が記載されており、生物多様性民間参画ガイドライン(2009、環境省)と比較したところ、エコロジカル・ネットワークというキーワードを用いていないなど、いくつかの課題があるとの説明もありました。また、この実行計画に従い、会員各社の取組のフォローアップ調査、先進事例の収集・公開、セミナー・見学会なども実施しているとの紹介がありました。このフォローアップ調査の結果についても一部紹介があり、例えば新築オフィスビルに比べ、分譲マンションでは敷地条件や所有・管理主体の違いなどの制約があるものの、両者ともに生物多様性の取組は年を追うごとに増加していることなどが説明されました。
 一方で、推進体制としては、エネルギー消費量の削減などの取組に対しては、オフィスビルWGとマンションWGを設けて対応している一方で、生物多様性WGは未設置であり、2016年度に設置を検討したい旨の説明がありました。
 後半では、不動産業に関連の深い3つの第三者認証制度について、その概要等とともに、会員各社がどのように活用しているか、具体的な説明がなされました。




(3) 日本製紙連合会 「生物多様性に関する日本製紙連合会の取組」
 上河 潔 氏
(日本製紙連合会 常務理事)

 はじめに、製紙産業が生物多様性の取組を進める必要がある理由として、製紙企業は原料が木材であり、生物多様性との関係が大きいこと、多くの水を使うことで生物多様性への負荷が大きいことから、生物多様性の保全に積極的に取り組むことが社会的責務であり、このため日本製紙連合会として「生物多様性保全に関する日本製紙連合会行動指針」を策定した旨が述べられました。また、その活動範囲について、製紙産業では原材料調達から生産、輸送など、全ての段階で生物多様性と関わっており、全ての段階で生物多様性への配慮が必要であるとも説明されました。
 取組の経緯についても説明がなされ、2010年に開催された生物多様性条約COP10にサイドイベントを出展したことをきっかけに、取組を開始したとのことでした。その後、海外植林における生物多様性配慮に関する調査・研究を委託業務として実施し、その後行動指針と広報戦略を策定したことなどが紹介されました。
 また、2015年には、行動指針に基づいた会員企業の取組のフォローアップ調査を実施したこと、2015年度には、環境省モデル事業の中で、外部ステークホルダーとの意見交換会と会員企業向け勉強会を実施したことが紹介されました。
 また、行動指針の、個々の項目に関する説明がなされました。この中では、FSCやPEFC、SGECなどの第三者認証を取得することを推奨していることが説明されました。また、この指針作成においては、その後のモニタリングが容易となるよう、可能な限り具体的な内容を盛り込むなどの工夫がなされているとのことでした。




5.交流会

 交流会では、事例紹介で登壇された事業者を含む9団体のブースが出展され、それぞれの取組を紹介しました。各ブースでは、取組に対しての質問や意見など、参加者との情報交流が活発に行われました。



交流会の様子



6.パネルディスカッション~事業者の生物多様性に関する取組促進のために事業者団体に期待されること~
 

 パネルディスカッションでは、コーディネーターに経団連自然保護協議会企画部会長の石原博氏をお迎えし、「事業者の生物多様性に関する取組促進のために事業者団体に期待されること」というテーマで意見交換を行いました。
 パネリストとしては、事業者の立場から三菱地所株式会社の井上氏、事業者団体の立場から日本製紙連合会の上河氏、事業者と事業者団体両方の立場から日本製薬工業協会及びアステラス製薬株式会社の岡田氏、NGOの立場から一般社団法人コンサベーション・インターナショナル・ジャパンの日比氏に登壇いただきました。また、行政の立場から環境省生物多様性施策推進室の堀上が登壇しました。
 まず、冒頭に三菱地所株式会社の井上氏から三菱地所における取組をご紹介頂きました。


井上 成
(三菱地所株式会社 開発推進部 新機能開発室 室長、一般社団法人大丸有環境共生型まちづくり推進協会(エコッツェリア協会) 総合プロデューサー)


 三菱地所株式会社は、大丸有地区の開発において、エコロジカル・ネットワークを形成し、地区のブランディングにつなげる取組を実施しています。しかしながら、都市全体の環境を向上させるためには、個社による敷地単位の取組をエリア単位に広げ、それを都市全体に集約統合する必要があり、それが東京オリンピック・パラリンピックに向けた都市のブランディングにつながっていくものであると説明されました。
 パネルディスカッションでは、まず事業者としての取組の理由・きっかけについて質問されました。主な理由としては、一方では資産価値を上げること、他方では株主等の対外的説明責任といったリスク管理の観点が一つの動機であったと説明されました。また、前者については、取組によってどれだけ価値向上につながるか、経営陣向けの説明材料を整えることが課題であると説明されました。
 次いで、事業者団体としての取組の理由・きっかけについての質問に対しては、NGO等からの批判に対して個々の企業では対応できない部分があったことや、具体的に何に取り組めばよいか分かりづらい生物多様性に関して会員企業が取り組みやすくなるための情報を提供することが動機であったと説明されました。一方で、既に多くの業種において、個社が既に生物多様性保全の取組を開始している中で、事業者団体として取り組むことの意義やメリットについて質問がありました。これに対しては、これまで取組を実施してこなかった企業まで取組に巻き込むことができることや、業界を代表して政策提言すること、公民連携の取組を進めるにあたっての橋渡し役が期待されるといった発言がありました。
 これらの議論に対し、NGOや行政の立場からは、取組のフロンティアを広げていくという意味からも、事業者団体の取組を歓迎する旨の発言に加え、個々の会社が生物多様性に関する取組を進めるだけでは不十分で、業界でまとまってやらないと市場が拡大せず、また課題の解決につながっていかないのではないか、といった発言がありました。
 最後に、事業者団体の果たすべき役割について議論しました。企業から事業者団体に向けられている期待として、事業者団体の役員には各社の経営層が就任していることから、各社の経営層への理解促進、政策提言を通じた生物多様性保全の取組に関するインセンティブの創出への働きかけ、他業種とのコミュニケーションなどにおいても、積極的に関わることを期待されていることが分かりました。
 このような期待の声に対し、事業者団体の立場からは、引き続き取組を進めていくとの発言と同時に、特に行政に対し、最新の情報収集や能力構築が可能なプラットフォームを準備してほしい旨の要望が出されました。これを受け、環境省からは、今後とも事業者団体の取組に対する支援を実施していくとの発言がありました。
 最後にコーディネーターから、以上の議論を踏まえ、事業者団体の取組は効果的・効率的であり、事業者からの期待もあること、また、事業者、事業者団体、行政、NGOの連携の必要性があるとのまとめがなされました。

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