屋久島の生態系保全の価値

白谷雲水峡縄文杉登山
評価対象 屋久島の生態系保全の価値
区分 国内
場所 鹿児島県
評価年 1997年
評価の実施者 栗山浩一
評価に至った
経緯

  • 世界自然遺産である屋久島は、レクリエーション地としての利用価値と、自然遺産としての非利用価値(景観価値、生態系価値)を有している。自然遺産登録後は訪問する観光客が増え、過剰利用による環境への影響が懸念されている。
  • そこで、利用価値と非利用価値それぞれについて経済的な価値の評価を行い、人々が屋久島に何を求めているのかを明らかにした。

評価手法 トラベルコスト法/CVM
評価結果

<トラベルコスト法による評価結果>

  • 屋久島の利用価値としてレクリエーション価値について、評価を実施した。
  • 屋久島島民と来島者に対してアンケート調査(島民:郵送、来島者:面接、宿泊客:留め置き)を実施した。(有効回答数 島民:105人、来島者:562人、宿泊客:930人)

  ■推定された屋久島の利用価値(レクリエーション価値)

旅行時間の貨幣価値を考慮しない場合:
36.8億円/年
旅行時間の貨幣価値を考慮した場合:
99.2億円/年
  • トラベルコスト法による評価の結果、「他の条件が一定のもとで、旅行費用が10%増大変化した場合、訪問率は30%減少する」ことが推測された。環境保全のために費用を徴収する場合、徴収金額及び徴収金の分配方法に十分注意する必要がある。

<CVMによる評価結果>

  • 全国を対象に、Webアンケート調査を実施し、屋久島に生息する多様な生物や、生態系を保全することに対する支払意思額(WTP)を尋ねた。
  • また、保護政策について、強いシナリオ(コア、バッファ、生活ゾーンに分けて保護)と弱いシナリオ(コアと生活ゾーンのみに分けて保護)を設定し、政策に対する支払意思額を尋ねた。

  ■屋久島の非利用価値(景観価値、生態系価値)を含めた評価額

   ・保護政策が強いシナリオ

WTPの中央値を用いた推定:
688億円
WTPの平均値を用いた推定:
2,483億円

   ・保護対策が弱いシナリオ

WTPの中央値を用いた推定:
293億円
WTPの平均値を用いた推定:
1,511億円
  • CVM調査では、保護政策が強いシナリオと弱いシナリオでは評価額が大きく異なることが確認された。これは屋久島の価値は普遍的なものではなく、屋久島をどのように管理するかによって大きく変化することを示している。
参考資料

栗山浩一、北畠能房、大島康行編著(2000)『世界遺産の経済学―屋久島の環境価値とその評価』勁草書房