六甲山系における森林の公益的機能の評価

六甲山の森林
評価対象 六甲山系における森林の公益的機能の評価
区分 国内
場所 兵庫県
評価年 1999年
評価の実施者 柘植隆宏
評価に至った
経緯

  • 森林の公益的機能に対する市民の要求は多様化しつつあり、従来の木材生産中心の森林管理から、より公益的機能の発揮に重点を置いた森林管理が求められるようになっている。
  • また、林業の長期的な停滞等を背景として、森林管理にも効率的な計画設定と実施が強く求められている。
  • 以上を踏まえると、森林管理事業を実施する際には、事前に森林に対する市民の選好を把握し、事業計画に反映することが効率的である。このため、兵庫県六甲山系を例として、市民の選好に基づき森林の公益的機能の重要性を明らかにするとともに、それぞれの価値を貨幣単位で評価した。

評価手法 コンジョイント分析
評価結果
  • 事業対象地域を含む宝塚市、西宮市、芦屋市、神戸市の一般家庭を対象に、訪問留め置き調査により実施された。(有効回答数 125人)
  • 「公益的機能(土壌流出防止能力,保水能力,大気浄化能力)の程度」、「ハイキングコースの延長」、「野鳥の種数」、「負担額(1年あたりの市民税の上昇額)」の属性を用いて限界支払意思額を算出した。

■各属性に対する限界支払意思額

土壌流出防止能力:
142.2円/%
保水能力:
114.1円/%
大気浄化能力:
137.1円/%
ハイキングコース:
8.4円/km
野鳥の種数:
29.2円/種
  • 市民は山地災害防止機能や水源涵養機能等、防災や生活環境の保全に関わる機能を高く評価しているが、レクリエーション機能や生態系保全機能にも、無視できない価値を見出していることがわかった。
  • 直接的な利用を伴うレクリエーション機能よりも、必ずしも直接的な利用を伴わない生態系保全機能をより高く評価している点は、市民が森林の非利用価値に高い価値を見出していることの表れである。
参考資料

柘植隆宏(2001)『市民の選好に基づく森林の公益的機能の評価とその政策利用の可能性-選択型実験による実証研究-』環境科学会誌,14(5):pp.465-476