釧路湿原における自然再生事業の評価

釧路湿原の風景
評価対象 釧路湿原における自然再生事業の評価
区分 国内
場所 北海道
評価年 2008年
評価の実施者 栗山浩一/庄子康/三谷羊平
評価に至った
経緯

  • 釧路湿原では過去に損なわれた自然環境を取り戻すことを目的として、2002年より「自然再生事業」を実施している。
  • 自然再生事業では、河川の再蛇行化、土砂流入防止のためのため池設置、湿原上流の森林整備・再生等の事業が計画されている。
  • 自然再生事業では、地元住民や地元の環境保護団体、研究者などによって構成される協議会を設置し、釧路湿原の自然をどのように再生するかについて議論が交わされている。
  • しかし、関係者間で事業に対する価値観が異なるため、自然再生のあり方に係る合意形成は容易ではない。
  • 以上の状況を踏まえて、住民を対象にした、事業の価値を評価する調査を実施した。

評価手法 コンジョイント分析
評価結果

  • 北海道在住の20代から60代の男女を対象としたWebアンケート調査により、釧路湿原の自然再生事業の価値について尋ねた。(回答サンプル数1,570人)
  • 「再生事業(河川の再蛇行化,森林の回復,ため池の設置)」、「土砂削減量」、「事業の成功確率」、「支払額」の属性を用いて限界支払意思額を算出した。

■標準的なモデルによる推定結果(単位は1世帯当たり年間の金額)

ため池の設置:
-884.3円
森林の回復:
787.5円
河川の再蛇行化:
96.8円
土砂削減量:
75.0円/%
事業の成功確率:
60.7円/%
  • 標準的なモデルでは住民は森林の回復を求めていると単純に判断された。
  • 一方で、回答者の選好によってクラス分けをしたモデルを用いて評価したところ、回答者は森林と河川の両方を重視するグループ、森林をより重視するグループ、河川をより重視するグループ、どちらも重視しないグループに大別されるなど、住民の多様な価値観を確認することが出来た。
参考資料

柘植隆宏、栗山浩一、三谷羊平著(2011)『環境評価の最新テクニック:表明選好法、顕示選好法、実験経済学』勁草書房