沖縄県やんばる地域における絶滅危惧種の経済価値評価

やんばるの原生林ヤンバルクイナ
評価対象 沖縄県やんばる地域における絶滅危惧種の経済価値評価
区分 国内
場所 沖縄県
評価年 2012年
評価の実施者 長崎大学
評価に至った
経緯
  • 沖縄本島北部にはやんばる地域と呼ばれる豊かな自然環境の残る地域がある。やんばる地域にはヤンバルクイナ、ヤンバルテナガコガネ、ノグチゲラなど地域固有の希少種が数多く生息している。しかし、外来種であるマングースによる捕食や、森林伐採、開発及び密猟等により、絶滅の危機に瀕している。
  • これらの希少な生物種を保護するために、国や自治体、地元住民などが協力して様々な対策や活動を行っている。
  • 当地域は、国立公園指定や世界遺産登録に向けた関係機関の努力が続けられており、今後、政策実施の優先度が高い地域であるため、経済価値評価を実施した。
評価手法 CVM/コンジョイント分析
評価結果
  • 全国を対象としたWebアンケートにより、CVM及びコンジョイント分析を用いて経済価値評価を行った。(回答サンプル数 1,861人)

<CVMによる評価結果>

  • やんばる地域における希少な固有の野生生物の生息環境を現在の状態に維持するための対策に対する支払意思額(WTP)を尋ねた。

  ■CVMにより推定されたWTP(1世帯当たり)

中央値:
772円/年
平均値:
1,921円/年

<コンジョイント分析による評価結果>

  • 「森林の保護面積」、「ヤンバルクイナ羽数」、「ヤンバルテナガコガネ保護」、「基金への負担額」の4種類の属性を用いて限界支払意思額を算出した。

  ■コンジョイント分析により算出された限界支払意思額(1世帯当たり)

森林の保護面積を1km2増加させること:
2.9円/年
ヤンバルクイナ羽数を1羽増加させること:
1.0円/年
ヤンバルテナガコガネを確実に絶滅回避させること:
2,423円/年

  ■以下のシナリオを想定した場合のWTP(1世帯当たり)3,980円/年

  • 森林を全て(271km2)保護地域に指定
  • ヤンバルクイナを発見当時の羽数(1,800羽)まで増加
  • ヤンバルテナガコガネを確実に絶滅から回避
参考資料

平成23年度 環境経済の政策研究 経済的価値の内部化による生態系サービスの持続的利用を目指した政策オプションの研究 最終研究報告書 平成24年3月| 財団法人地球環境戦略研究機関(IGES) 京都大学 長崎大学 名古屋大学 吉田謙太郎著(2013)『生物多様性と生態系サービスの経済学』昭和堂