バルディーズ号事故の生態系被害額の算定

ゴマフアザラシの群れ
評価対象 バルディーズ号事故の生態系被害額の算定
区分 北アメリカ州
場所 アメリカ
評価年 1991年
評価の実施者 Carson(カリフォルニア大学)
評価に至った
経緯
  • 1989年、エクソン社のタンカー「バルディーズ号」が米国アラスカ州沖で座礁し、4,200万リットルに及ぶ原油が海に流出した。この原油流出事故により、推定40万羽のウミガラスや、300匹のゴマフアザラシ、3,000匹のラッコなどが死亡し、海洋生態系は極めて大きな影響を受けた。
  • エクソン社は、流出した原油を除去するために20億ドル以上もの莫大なお金を投下したが、失われてしまった生態系に対しても賠償責任があるのか、生態系の損害額をいかにして決定するのか、このような生態系に対する賠償責任をめぐって議論が展開された。
  • こうした背景のもと、CVMによる生態系破壊の損害額の評価が行われた。
評価手法 CVM
評価結果

  • 全米の一般市民からランダムに抽出された1,599世帯に対して、訓練を受けた専門の調査員による訪問面接調査が実施された。(有効回答数 1,043世帯)
  • 事故が起きたプリンス・ウィリアム海峡で大規模な原油流出事故を防止するためのプログラム(エスコート・シップ)に対する支払意思額を尋ねた。

■CVMにより推定されたWTP(1世帯当たり)

中央値:
30ドル

■WTPに全米の世帯数を乗じた集計額

 
28億ドル
成果の活用
  • 生態系破壊の損害額28億ドルをもとに、連邦・州政府とエクソン社との間で交渉が行われ、エクソン社は合意が得られた補償額約10億ドルを支払った。
参考資料

栗山浩一著(1997)『公共事業と環境の価値―CVMガイドブック』築地書館