調整サービス

大気質の調整及び他の都市環境の質の調整

大気質の調整及び他の都市環境の質の調整のイメージ(大阪市鶴見緑地)

主に都市域における大気質の調整や、都市環境の品質を調整するサービス

樹木や植物によって、大気汚染や騒音が大幅に低下したり、都市部のヒートアイランド現象が緩和したりするなど、都市の生態系は都市の環境調整サービスに寄与しています。また、緑地の存在が健康に効果があるという報告もあります。

このような都市生態系サービスは、公園、墓地、空き地、川、湖、庭、大学のキャンパス、など、様々な環境が担っています。

気候調整

気候調整のイメージ(地球の雲景)

地球の表面温度を維持するサービス

地球の表面の気候は、生命を維持することができる温度に保つ天然の「温室効果」によって調整されています。現在の気候変動は、主として、土地利用の変化、化石燃料の消費の急増によってもたらされています。

主な温室効果ガスであるCO2は、直接的には水、間接的には(光合成を通じて)植物によって吸収され、バイオマス及び土壌内に有機物として貯蔵されます。また、泥炭地など炭素を貯蔵する土壌は、気候の調整に大きな役割を果たしています。さらに、海洋の生物が体内にCO2を蓄えるなど、海洋環境も気候調整に重要な役割を果たしています。

局所災害の緩和

局所災害のイメージ(洪水の様子)

生命、健康、または財産に大きな脅威を及ぼし得る自然災害などを緩和するサービス

森林、サンゴ礁、海草、海中林、湿地帯、そして砂丘などの生態系は、天然の防壁または緩衝帯として、暴風や台風、洪水、津波、雪崩、野火、地滑りといった自然災害の影響を軽減することができます。

このサービスで、自然災害を完全に防ぐことはできませんが、生物多様性には、被害を緩和・軽減し、回復を促進する役割があり、生物多様性が失われると、生態系の回復力も低下する可能性があります。

土壌浸食の抑制

土壌浸食の抑制のイメージ(植物に覆われた地面)

植物が土壌浸食や地滑りを防ぐサービス

植物が地面を覆うことは土壌の浸食防止に大きな効果があります。急傾斜地では、森林が土壌の水分状況を調整し、地滑りを防いでいます。

近年では地滑りの頻度が増加傾向にあり、これは、森林破壊などの土地利用の変化によると考えられます。

地力の維持及び栄養循環

地力の維持及び栄養循環のイメージ(肥沃な土壌)

地力(土壌肥沃度)を維持し栄養循環を支えるサービス

土壌の質は、母材の性質、生物学的過程、地質、そして気候によって決定されます。土壌成分は養分循環に支えられ、その土地の生産性に大きく影響します。土壌の生物多様性が豊かであれば、養分循環に影響を与え、作物の生産量も向上するといわれています。

花粉媒介サービス

花粉媒介サービスのイメージ(イチゴの受粉を媒介するミツバチ)

昆虫や鳥などが植物の受粉を媒介するサービス

75%を超える世界の作物及び薬の素となる種の植物の多くは、授粉媒介動物(昆虫、鳥、コウモリなど)による授粉に依存するといわれています。

農業の集約化と授粉媒介動物の生息環境喪失によって、農業生態系が多様性を失うと、授粉システムの維持に悪影響を及ぼします。授粉媒介動物の多様性が低下すると、結実・結種不良で作物の収量が減少します。野生の花粉媒介動物が消失したため、手作業で受粉を補わなければならなくなった事例もあります。農地に隣接した野生の花粉媒介動物の生息地を保全することは、花粉媒介サービスを安定的に向上させ、収穫と収益の増加につながります。

生物的コントロール

生物的コントロールのイメージ(アブラムシを捕食するナナホシテントウ)

有害生物及び病気を生態系内で抑制するサービス

有害生物や病気は、捕食者や寄生生物の行動などによって生態系の中でコントロールされています。短期的には虫害を抑えて収穫高を増加させ、長期的には生態学的平衡を保って草食性昆虫が害虫となるのを防いでいます。農業病害虫は世界中でかなりの経済的損失をもたらしており、また、気候変動により作物種に新たな病気や虫害が発生することも想定され、このサービスは、今後、重要性が増すと考えられます。

有害生物の天敵となる生物に多様性があると、このサービスは向上すると考えられています。

※出典
TEEB報告書 D0 生態学と経済学の基礎