23 ニホンジカによる生態系への影響のおそれのある重要地域

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概要

ニホンジカの食害等により影響を受ける可能性のある脆弱な生態系や重要な地域を示した地図。

考え方

ニホンジカは、我が国の野生鳥獣の中でも採食や踏みつけによる生態系への影響が特に大きい種の1つであり、生息密度が高くなると、植物の生育や植生等に大きな影響を与える。現在、ニホンジカは全国的に分布が拡大し、生息数も増えており、農林業被害や自然生態系への被害防止が喫緊の課題となっている。

ここでは特にニホンジカの食害等により影響を受けるおそれの高い重要な生態系や地域を抽出するため、地図14-1で作成したニホンジカの分布記録及び分布の拡大予測と、希少な生態系や重要な地域を重ね合わせた。これにより、現在既に「生態系に対して強い影響の懸念のある重要地域」と、現在または近い将来に「影響の懸念のある重要地域」を抽出した。

データ及び加工方法

2011年8月に公表された植生学会の全国のシカ影響のアンケートによると、環境省の分布調査において1978年と2003年で連続して出現記録のある地域では、植生被害が大きい傾向があるとされた。そうした地域では2003年に新たに確認された地域と比較して、ニホンジカの生息密度が相対的に高いことが大きな要因であると考えられる。また、1978年以降に分布が拡大した地域でも、植生へ影響を与えるまでの時間や被害程度はその周囲での生態系や対策状況により異なっていることが示されている。

ここでは植生・生態系への影響のおそれのある地域として、以下の2つを表示した。

  • 1978年より分布確認されている地域を「強い影響の懸念のある地域」とした。
  • 2003年に分布が確認されたもしくは「確認の可能性の高い地域(地図14-1で緑色の地域)」を「影響が懸念される地域」とした。

上記2つのそれぞれの地域に含まれる小規模で開発に対して脆弱な生態系(地図2)、絶滅危惧種の集中分布地域(維管束植物)(地図8-2)で10種以上の種数が確認された地域を選択し、地図に示した。

なお、小規模で開発に対して脆弱な生態系のうち、シカの直接的な被害を想定しにくい環境(河川、干潟、藻場、サンゴ礁、浅海域、水路、洞窟・地下水系、池沼、ため池等)は除いた。

【参考データ】
植生学会企画委員会(2011)ニホンジカによる日本の植生への影響 ̶シカ影響アンケート調査(2009 ~ 2010)結果̶,植生情報第15 号.

地図により表現される生物多様性の状況

北海道の中部・東部、関東から日本海側を除く中部地方・近畿地方、四国東部、九州東部・南部、屋久島地域等でニホンジカの「強い影響の懸念のある重要地域(希少な生態系と絶滅危惧種の集中地域)」が多数みられる。これらの地域では、駆除等によるニホンジカの生息密度のコントロールに加え、重要地域の周囲に防鹿柵等を設置する等の保全対策の必要性を早急に検討することが必要である。

一方、「影響が懸念される重要地域」は北海道から九州までの広い範囲で見られる。こうした地域では、ニホンジカの分布状況や重要地域の被害状況を確認または監視するとともに、必要に応じて、ニホンジカの生息密度のコントロール等の措置やそのための体制づくり等を進めていくことが必要である。

データの
ダウンロード
データの出典
  • 地図2「小規模で開発等に対して脆弱な生態系を有する地域」および地図「8-2 絶滅危惧種の確認種数(維管束植物)」と同じ
データに関する注意事項等
  • GISファイルには重要湿地500のデータは含まない

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