15-1 侵略的外来種による生態系への影響が懸念される地域(アライグマの分布とその拡大予測)

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概要

アライグマが生態系へ被害をもたらす可能性のある地域を示した地図。

考え方

北米原産の外来生物であるアライグマは雑食性で、果実や野菜の他、小型哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、昆虫や甲殻類などを幅広く採食する。日本各地の森林、湿地、市街地などに定着し、広域にわたり生態系被害をおよぼしている侵略的外来生物として、外来生物法により特定外来生物に指定されている。生態系への被害に加えて、農業被害やアライグマ回虫症といった直接の人的被害も見られる。外来生物は、定着が確認されたのちに短時間で急速に生息数が拡大し大きな被害を与えることがため、分布の拡大を予測し、早期の発見と駆除等の対策を行うことが特に重要である。

この地図では、アライグマの実際の分布記録のデータにより、現在の分布状況を示すとともに、今後の拡大の可能性を簡易に予測した。

データ及び加工方法

【実際の分布記録データ】
実際の分布記録は以下のデータを用いた。

  • 平成21年度外来生物問題調査検討業務報告書 環境省野生生物課 外来生物対策室.

なお、同報告書のアライグマ分布データは以下のような様々な調査の分布データを収集して作成している。

<主なデータソース>

  • 平成18年度自然環境保全基礎調査 アライグマ生息情報収集調査
  • 平成14年度自然環境保全基礎調査 動物分布調査報告書 哺乳類
  • 国土交通省 河川水辺の国勢調査(平成3~17年度)

【分布拡大の予測】
本地図では既存の分布データをもとに、移動距離(移動コスト)を算出し、既存分布データ周辺の分布拡大の可能性の高い地域を抽出した。

なお、アライグマは生息環境として、一般的には水辺に近い森林環境を好むとされる。しかしながら移入環境においては湿地帯から農耕地・海岸・都市環境等に広く適応しており、ヨーロッパでは都市公園に住み着いた事例もあり、広域レベルで明確に認識できる移動の制限要因は判明していない。そのため、ここでは陸上はすべて均一の移動コストとして、分布拡大の可能性を判定している。

(参考文献)
阿部永・石井信夫・伊藤徹魯・金子之史・前田喜四雄・三浦慎悟・米田政明(2005)日本の哺乳類 改訂版 東海大学出版会.
池田透(1999)北海道における移入アライグマ問題の経過と課題、北海道大學文學部紀要』第47巻第4号.
日本生態学会編 村上興正他監修(2002) 外来種ハンドブック.
FUJITA, M., F. KOIKE and A. SAKAI. Role of birds in nutrient cycle in suburban landscape, Japan.(2004) The Ecological Society of America 89th Annual Meeting.

地図により表現される生物多様性の状況

既存の分布データから、北海道、関東、中部、近畿の都市周辺に広く分布の記録があり、その他の地域においても、まばらに分布している。こうした地域に隣接する地域については、分布が拡大する可能性が高いと考えられ、近い将来に生態系や農業への被害等が生じるおそれがあることから、関係者への警戒の呼びかけ、生息情報の一元的な集約体制の構築、侵入の早期発見と駆除体制の構築が重要である。

データの
ダウンロード
データの出典

【分布記録】

  • 平成21年度外来生物問題調査検討業務報告書 環境省野生生物課 外来生物対策室
  • 平成18年度自然環境保全基礎調査 アライグマ生息情報収集調査
  • 平成14年度自然環境保全基礎調査 動物分布調査報告書 哺乳類
  • 国土交通省 河川水辺の国勢調査(平成3~17年度)
データに関する注意事項等

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