概要 |
竹林が分布する可能性の高い地域を示した地図。 |
考え方 |
タケ類は筍や竹材を得るための重要な植物であるが、近年、中国からの筍の輸入が増大し、里地里山の管理放棄と相まって、管理されていない竹林が増加している。タケ類は地下茎を伸ばして周囲の森林や畑に侵入し、筍は速やかに伸長して他の植物と置き換わり、竹林が拡大していく。放棄された竹林の拡大は、土砂災害の危険性や里地里山の生物多様性の低下などにつながりうる。 竹林は比較的小面積のものが多く、竹林拡大が問題となっている一部の地方自治体を除くと、詳細な分布状況は把握されていない。また、自然環境保全基礎調査の第2~5回の植生調査では全国的に竹林の凡例が区分されているが、植生の最小判読単位は1haと比較的粗いため、各地で問題となっているような小規模な竹林は判読できていないと考えられる。 そこでこの地図では、竹林分布の実態把握や今後の分布拡大防止への対策の基礎とするため、先行研究によって環境要因から推定された竹林が分布する可能性の高さを、竹林分布確率として表示した。 |
データ及び加工方法 |
環境省による自然環境保全基礎調査第5回植生図から、染谷ほか(2010)により、大型のタケ類(モウソウチク林、マダケ・ハチク林、マダケ林、ホテイチク林)が分布する3次メッシュを1、分布しない3次メッシュを0として、一般線形化モデル(GLM: Generalized Linier Model)を用いて、3次メッシュ単位での竹林分布確率を推定した。環境変数には、気象庁の気候値メッシュ(1974年)データ、国土交通省の土地分類・土地利用メッシュデータ、地形データなどを用いて算出した8つの環境要因(暖かさの指数(WI)、年間降水量、最深積雪量、表層地質、斜面傾斜角、森林率、農地率、宅地率)を使用している。 染谷ほか(2010)によると、算出した竹林分布確率を1980~1990年代に作成された広島県の6地区における2万5千分の1の植生図から算出された竹林面積と比較して精度を検証したところ、竹林面積・竹年間拡大率と分布確率平均値にいずれも高い正の相関が見られる。このことから、分布確率は実際の竹林の分布や竹林拡大率を高い精度で反映していることが示唆されている。 【データ引用元】
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地図により表現される生物多様性の状況 |
竹林が分布する可能の高い地域は西日本に多く(地図上の赤色の地域)、都道府県別の分布平均確率は長崎県、佐賀県、山口県、千葉県、福岡県、大分県、島根県、京都府、兵庫県、静岡県で高い。逆に大型タケ類の分布北限と考えられる北海道、東北各県では分布確率は低くなっている。これらの竹林の分布確率が高い地域では、竹林が広く拡大しているか、または今後の拡大が予測されることから、モニタリングや早めの拡大防止対策が必要である。特に、これまで自然環境保全基礎調査の植生図のレベルではほとんど竹林が記載されていなかった鳥取県、愛媛県、長崎県などにおいても、実際にはかなりの面積で竹林が分布していると考えられることから、特に注意が必要である。 |
データの ダウンロード |
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データの出典 |
【竹林分布確率のデータ】
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データに関する注意事項等 | - |