7 潜在的に多数の渡り鳥が渡来する沿岸域

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概要

潜在的に多数の渡り鳥(シギ・チドリ類)が渡来する沿岸域を示した地図。

考え方

長距離を移動する渡り鳥であるシギ・チドリ類は、日本の底生生物などの生物相が豊かな干潟を中継地(採餌場所)として利用する。このため、シギ・チドリ類の生息可能性が高い干潟は、生物相が豊かな重要な干潟であると考えられ、こうした干潟は日本の生物多様性の保全上重要である。

また、シギ・チドリ類にとっても、中継地である日本の干潟が失われると、たとえ海外の越冬地・繁殖地が豊かに残されていたとしても生息できなくなってしまうため、シギ・チドリ類の生息可能性が高い干潟を残すことは、日本だけでなく世界の鳥類を保全するうえでも重要である。

この地図は、日本に飛来し主に潮間帯を利用する主要なシギ・チドリ類6種を対象に、それらの潜在生息域を推定した。

データ及び加工方法

WWFジャパンや自然環境保全基礎調査(鳥類繁殖分布調査)などによる1999年から2008年までの鳥類センサスにおいて、100個体以上が記録されている潮間帯63箇所のシギ・チドリ6種(ハマシギ、トウネン、チュウシャクシギ、キアシシギ、シロチドリ、ダイゼン)の分布データを用いて、それぞれの地域の潜在生息種数を評価した。環境変数は湾の面積(m²)と浅海域の面積(m²)(それぞれ1km、3km、6kmのスケールで測定)、大潮差(cm)を評価し、寄与率の高いものを選択した。解析には、Maximum entropy modeling(Maxent: Phillips et al. 2006)を用いた。

生息可能性は0.0~1.0の値をとり、それぞれの種について生息可能性が0.5より高いメッシュを潜在生息域とし、6種の潜在生息域を重ね合わせた。

【データ引用元】

  • H. Arakida, H. Mitsuhashi, M. Kamada, and K. Koyama (2011)Mapping the potential distribution of shorebirds in Japan: the importance of landscape-level coastal geomorphology. Aquatic Conservation: Marine and freshwater Ecosystems 21. 553-563.からの引用
地図により表現される生物多様性の状況

北海道東部沿岸、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海、周防灘、九州沿岸部(博多湾、有明海、八代海など)(地図上の濃茶色)は、6種全ての潜在生息域が重なる地域である。こうした地域は、広域的な観点から保全や再生の対象とすべき地域である。例えばこれらの地域には、最近の調査でもシギ・チドリ類の個体数が多いことが確認されている場所だけでなく、過去、河口堰の建設前には重要なハビタットとして記録されていた場所(周防灘北部、菊池川、諫早湾など)も含まれている。

こうした潜在的に種が豊富な沿岸域では、積極的にモニタリングを行い、必要に応じて保全や再生の対策が必要である。最近でもシギ・チドリ類の個体数が多い北海土右党部沿岸などでは積極的に保全を行い、東京湾のように既にかなり改変されてはいるものの潜在生息域として抽出された場所では、積極的な潮間帯の再生を行うと効果が高いと考えられる。

データの
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データの出典

【潜在生息種数のデータ】

  • 三橋弘宗氏(兵庫県立人と自然の博物館)らの解析結果データ
データに関する注意事項等

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