6 河川の連続性(流域の分断と通し回遊魚の分布)

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概要

上流から下流にかけての連続性が確保されている流域及び全国の通し回遊魚の分布状況を示した地図。

考え方

ダムなどの大規模な河川横断構造物は、魚類等の上流・下流への移動を阻害する。通し回遊魚は、生涯に一度は海に下り、再び川に戻る回遊性の生活史を送っている種であり、これらは河川横断構造物によって移動を妨げられると、多くの場合、その場所よりも上流側に遡上できず、生活史を完結させることが出来ない。このため、通し回遊魚など移動性の水生動物の生息にとっては、河川が上流から下流まで連続し、遡上可能であることが重要である。

通し回遊魚には、代表的なものとして知られるサケ類のほか、ウナギ、アユ、イトヨ、また多くのハゼ科や一部のカジカ科等の種が該当する。これらの通し回遊魚の生息は、河川が連続的につながっていることの指標となる。

日本の山間部に見られる流域の大部分は、すでにダムによって分断されており、それらのダムの多くは、昭和以降に建設されたものである。

この地図では、大規模な河川横断構造物として、全国的にデータが整備されている大規模ダムに着目して、ダムが建設されておらず河口から連続している流域を抽出し、河川の連続性の指標となる通し回遊魚の分布と重ね合わせた。

データ及び加工方法

<流域分断図>
国立環境研究所において、国土数値情報のダム分布ポイントデータをもとに作成した、国土交通省が管理する約3,100基の高さ15m以上の大型のダムの構造物の位置などのデータと、「環境動態モデル用河道構造データベース(国立環境研究所)」の流域のネットワークデータ(水系のつながりのデータ)を重ね合わせることにより、ダムによる上流域の分断化を地図で示したもの。

<5kmメッシュ内の通し回遊魚の種数>
自然環境保全基礎調査の動物分布データ及び河川水辺の国勢調査のデータ(第1~3巡)から、通し回遊魚のみを抽出した。本解析では、海から河川の中・上流までを移動する種を対象とし、海から汽水域や下流までの狭い範囲しか回遊しない種は検討から除外した。また、ウグイやオオヨシノボリ等、湖やダム湖等に陸封される場合のある種は除外した。抽出した通し回遊魚の分布情報を5kmメッシュ単位で集計し、メッシュ内に生息する通し回遊魚の種数を地図に示した。地域により潜在的に分布する通し回遊魚の種数が異なるため、単純に種数だけで比較できるものではないことには注意が必要である 注1)。

なお、本解析で扱った通し回遊魚は以下の27種 注2)である。
カワヤツメ、ウナギ、マルタ、キュウリウオ、アユ、イトウ、カラフトマス、サケ、
サツキマス、サクラマス、降海型イトヨ、イバラトミヨ、キタノトミヨ、
テングヨウジ、イッセンヨウジ、カンキョウカジカ、カマキリ、回遊型カジカ、
ゴマフエダイ、ユゴイ、オオクチユゴイ、シマウキゴリ、スミウキゴリ、
ゴクラクハゼ、シマヨシノボリ、クロヨシノボリ、ボウズハゼ

注1)例えば解析に用いた27種の内北海道では15種が分布するが、九州に分布するのは14種、沖縄に分布するのは9種である。
注2)分布データの元になった自然環境保全基礎調査の名称に基づく。分類学的種に必ずしも該当しない。

【データ】

  • 国立環境研究所 福島路生氏保有 の以下の関連内部資料
    福島路生(2010)第8章 ダムの分断による淡水魚類の多様性低下(谷田一三・村上哲生 編「ダム湖・ダム河川の生態系と管理」名古屋大学出版会. pp.340)より引用
  • 自然環境保全基礎調査 動物分布調査報告書 淡水魚類(平成14年、環境省)
  • 国土交通省 河川水辺の国勢調査(平成3~17年、国土交通省)
地図により表現される生物多様性の状況

分断化される地点より下流では上流より通し回遊魚の種数が多い傾向がある。大規模な河川横断構造物がなく、上流まで河川が連続している流域(地図上の白)は、通し回遊魚などをはじめとする水生生物の個体群の維持のために重要な流域として、連続性を確保するように留意すべきである。

また、現在横断構造物によって分断化されている流域(地図上の灰位色の流域)では、魚道の設置などの対策により水生生物の移動路を確保することによって、上流への水生生物の移動を促進することが可能である。

データの
ダウンロード
データの出典

【淡水魚類の分布データ】

  • 自然環境保全基礎調査 動物分布調査報告書 淡水魚類(平成14年、環境省)
  • 国土交通省 河川水辺の国勢調査(平成3~17年、国土交通省)

【分断化された流域のデータ】

  • 福島路生氏(国立環境研究所)の解析結果データ
データに関する注意事項等

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