4-2 農地とその他の土地被覆のモザイク性を指標とした里地里山地域の分布

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概要

農地を中心としてさまざまな環境が入り交じる里地里山地域を、Satoyama Indexという指標で示した地図。

考え方

里地里山は、農地、ため池、二次林、草原などの環境がモザイク状に存在し、動的な土地利用が行われることによって、多様な動植物の生息・生育の場となっており、我が国の生物多様性保全上重要な地域となっている。里地里山を特徴づける重要な要素の一つであるモザイク性に注目した指標であるSatoyama Index(詳しい算出方法はBox参照)を用いて全国を評価した。Satoyama Indexは農地とその周辺地域の土地被覆の多様度にもとづいた里地里山の指標であり、値が高いほど対象地域の土地利用のモザイク性が高いことを示す。

Satoyama Indexの値は、健全な里地里山を指標する両生類やイトトンボの種数との関係も見出されていることから、Satoyama Indexの高い地域(0.4以上。地図上の濃茶色の地域)は、里地里山を構成する特定の環境を利用したり、複数の環境を組み合わせて利用する動植物の潜在的な生息・生育地としても重要な地域を示していると考えることができる。

一方、Satoyama Indexが低い(0.4未満。地図上の橙色の地域)地域は大規模農地が多く、農地以外の環境が少ない均質な地域であると考えられる。特にSatoyama Indexが0の地域(地図上の黄色の地域)は完全に農地で占められており、モザイク状の環境が必要な生物種の生息にはあまり適していないと考えられる。

データ及び加工方法

Satoyama Indexは、日本全国を構成する約6km×6kmの空間単位の内、解像度を1kmとした時(計36グリッド)に1つ以上の農地(水田・畑地)グリッドが存在する空間単位を抽出し、空間単位内における農地と非農地の土地利用の多様度を算出したものである。多様度の計算には、Simpsonの多様度指数を用い、計算の際には都市として分類されたセルは除いた。0(土地利用が均質)~1(非常に土地利用の多様性が高い)までの値で評価する(BOX参照)。

【データ引用元】

  • Taku Kadoya & Izumi Washitani(2011)The Satoyama Index: A biodiversity indicator for agricultural landscapes. Agriculture, Ecosystems and Environment. 140:20-26 .からの引用
地図により表現される生物多様性の状況

東北、能登半島、新潟県、長野県、千葉県北部、瀬戸内海など広い範囲にSatoyama Indexの高い地域が点在している。これらの地域では農地とその他の土地利用が均等に配置され、モザイク状の里地里山環境が残っている可能性が高い。こうした地域で今後も里地里山の生物多様性を保全していくためには、農地を適切に維持管理していくことに加え、農地以外の生物の生息環境(森林や水域)を積極的に維持管理していく必要がある。また、農地や二次的自然の管理にあたっては、当該地域の伝統的な管理や利用方法を踏まえ、人との関わりにより育まれた地域固有の生物を保全することにも配慮する。

北海道の十勝平野、石狩平野、本州の新潟平野、関東平野など、大規模河川の河口付近に広がる広大な平野部では、大規模農地が多いため、Satoyama Indexが低い、または0である。こうした地域は、農地を中心とした効率的な土地利用がされているものと考えられるが、生物多様性に配慮した農業を実践し、周辺環境との連続性を可能な限り確保するなど、生物の生息環境の向上に配慮する。

Satoyama Indexの算出方法:
Satoyama Index とはMODIS衛星画像から作成した1km×1kmグリッドの土地利用データを使用し、6km×6km(計36グリッド)を1単位として、その内部における農地(水田・畑地)とその他の土地利用(都市を除く)の割合(p)を、以下のSimpsonの多様度指数を用いて計算した指数のことである。

Satoyama Indexの算出方法

ただし、農地が存在しないグリッドは計算の対象としていない(地図では白色で示されている)。また、1km×1kmの解像度では判別できない小規模な農地やその他の土地利用によって構成されている里地里山は表現できていないことに注意が必要である。

引用:Taku Kadoya & Izumi Washitani(2010)The Satoyama Index: A biodiversity indicator for agricultural landscapes. Agriculture, Ecosystems and Environment. (in Press).

データの
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データの出典

【Satoyama Indexのデータ】

  • 角谷拓氏(国立環境研究所)らの解析結果データ
データに関する注意事項等

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