COP12で見た国際的な主流化の動向
~「国連生物多様性の10年」中間年に向けたキックオフフォーラムより

2014年10月に、韓国のピョンチャンで開催された生物多様性条約第12回締約国会議(COP12)が開催されました。COP12での「愛知目標」中間評価など、主流化の動向について国際自然保護連合日本委員会事務局長の道家哲平氏より報告されました。

  • 国際自然保護連合日本委員会事務局長 道家哲平氏

    国際自然保護連合日本委員会
    事務局長 道家哲平氏

  • COP12開催概要

    COP12開催概要



COP12では、2011年に採択された「愛知目標」が中間年を迎えるにあたり、「Good but not Enough(良いこともあるけど、達成には不十分)」と評価しました。目標を達成した項目はわずか9%で、進展はあるが達成には不十分と評価された項目が59%、進展なしまたは後退している項目が32%と報告されています。

愛知目標達成に向けた中間評価

愛知目標達成に向けた中間評価



目標1:生物多様性認知度の拡大

愛知目標で定められた20の個別目標のうち、「目標1:遅くとも2020年までに、生物多様性の価値及びそれを保全し持続可能に利用するために取り得る行動を、人々が認識する。」と定められた認知度の拡大については、「いくつかの国では生物多様性とその認識度が低いものの、先進国・途上国の両国において認識が拡大している」と評価されました。日本における認知度は、一時期上昇しましたが、2014年調査ではやや落ち込んでいる状況です。
今後の認知度拡大・普及啓発の目標達成のために決まった内容としては「市民の態度変容(Behavior Change)が重要」とのキーワードが見られました。市民が生物多様性の価値を認知し、さらにどのように行動に結びつけていくか、を考えていく必要があります。 “知ってもらう”普及啓発から“行動(社会)を変える”ための戦略的な取組が重要です。

  • 日本における生物多様性の認知度

    日本における生物多様性の認知度

  • 「目標1:認知度の拡大」達成に向けてのCOP12決定

    「目標1:認知度の拡大」達成に向けてのCOP12決定




目標2:生物多様性の主流化

自然資本会計への取組

自然資本会計への取組

「目標2:遅くとも2020年までに、生物多様性の価値が、国と地方の開発及び貧困削減のための戦略や計画プロセスに統合され、適切な場合には国家勘定や報告制度に組み込まれている。」と定められた主流化への取組については、「生物多様性の価値の計画プロセスや貧困削減戦略、自然資本会計への統合で重要な進捗が見られた。国ごとに状況が異なるが、国際的なイニシアティブが底上げを図っている。」と評価されました。製品の原料調達から廃棄までの製品ライフサイクル全体で、水や木材など「自然資本」への負荷や供給リスクを把握し、会計システムに組み込む自然資本会計への取組が、世界銀行などの国際機関や一部企業で推進されています。
今後の主流化の目標達成のために、生物多様性国家戦略政策決定プロセスへ、自治体・企業・市民団体・ユースの各セクターが積極的に参加していくことが必要だと決定しました。各セクターへの奨励事項が具体的に提示され、さらにすべての取組において次世代へつなげていくためにユースとのつながりが求められています。



「目標2:主流化」達成に向けてのCOP12決定



次回の生物多様性条約第13回締約国会議(COP13)はメキシコで2016年に開催されます。COP13、COP14、COP15に向けた計画が提示されました。COP13では「農業、漁業、林業セクターの生物多様性の実施強化に対する戦略的行動」が議題として挙げられ、より幅広いセクターに主流化の取組を広げていくことになります。

「国連生物多様性の10年」の期間に開催される生物多様性条約締約国会議のスケジュール

「国連生物多様性の10年」の期間に開催される生物多様性条約締約国会議のスケジュール




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